史書でとりあげられ、18世紀フランスの社会を知るうえで不可欠とされながら、これまでその全容が紹介される機会がなかった貴重な一級史料を、詳細な注と解説とあわせて翻訳。
セバスティアン・メルシエの『十八世紀パリ生活誌』(タブロー・ド・パリ)が首都圏版とすれば、こちらは全国区版とでもいえようか。幼年時代の思い出からはじまり、修業時代の体験、そしてフランス革命を生き抜き、老年にいたるまでの波瀾万丈の人生を詳細につづった本書は、興趣つきぬ記述にあふれている。
2歳にして母と死別、ガラス職人の父からきびしく仕事を仕込まれるのだが、父との軋轢に耐え難くなったメネトラは親元を離れ、ガラス職人の修業巡歴の旅に出る。その旅のさなかで、彼は数多くの女性とめぐりあうことになる。 また、夫婦や親子関係、親族のネットワーク、職人階級の労働と修業の実態、風俗・道徳観、そしてフランス一周で見聞した各地の生活習慣・民衆文化に関する鋭い観察など、当時のフランス社会の様相が余さず記されている。
本書はダニエル・ロシュの校訂版であり、彼の「メネトラ、十八世紀を生きたある人生のかたち」と題する大部な解説が付されている。本編とあわせ、18世紀フランス社会と巡歴職人の生活を知る貴重な史料。 (出版社HPより)